ナズナ・ノート

ヒマラヤの紙

ロクタ箱 落款
今使っている希少な和紙を使ったジュエリーの箱に限りがあるため、次のジュエリーケースの紙を考えておかなくてはなりませんでした。

そして出来上がったのが下の写真の箱です。

なんと紙は、和紙やさんが直接ヒマラヤのネパールまで行って漉いてもらった紙です。2016年今年の初めのことです。
ネパールではロクタ紙とよばれているそうです。ロクタはヒマラヤのような高地に自生している沈丁花科の低木常緑樹で、日本のミツマタの原種とも言われているそうで、丈夫で破れにくく防カビ性や防虫性にも優れているので現地では千年以上昔から経典などに用いられてきたそうです。
今更ですが、日本だけでなく、世界中に紙の文化があるのだと再認識させてもらいました。

私が気に入ったのはなんといっても紙の風合い。まるで無心の子供が漉いたような、ロクタがミツマタの原種だったとしたら、できた紙も原種?のよう。美しい高地ヒマラヤで漉いてもらった紙は生成りの厚手で、ふんわりと暖かい、まさに紙の原点を見るような感じがします。

とても良いジュエリーケースが出来たと思います。
ヒマラヤのネパールの漉いて下さった方に感謝。そんな遠くまで漉いてもらいに行って下さった和紙やさんに感謝。

ロクタ紙の箱

この箱の内側には金木犀の花を金箔で散らせました。

東京国立博物館に普賢菩薩像の美しい掛け軸があります。
白い象に乗った普賢菩薩、天上からは舞い落ちる花々。
数ある普賢菩薩像の中で最も好きなものです。私は特に仏教徒というわけではありませんが、仏画としても、美しい絵画としても心打たれます。

今回の箱の、外側は仏教の法典にも使われたというネパールの紙、そして箱の内側に金木犀の花々を散らせ、そのバックに普賢菩薩像の茶色の背景データを取り込んでいます。一見するとただの茶色のバックに金木犀が散っているだけです。なんの意味もないかもしれない、ただ直感だけです。

それでも私は想うことができます。聖なる素材を込めた箱に包まれるジュエリーはどんなにか幸せに思ってくれるに違いないと。

Posted in ナズナ・ノートComments Closed